TOHO Games(トウホウ ゲームス)から2023年11月1日(水)にPC(Steamで配信中。Epic Gamesストア版は近日公開予定)向けに、2024年内にはNintendo Switch向けにリリースとなる『ゴジラ ボクセルウォーズ』(Godzilla Voxel Wars)。

TOHO Gamesとは、怪獣特撮映画でおなじみの東宝が展開するゲーム事業レーベル。そこから出る“ゴジラ”作品ということで硬派なイメージが思い浮かぶが、本作ではさまざまな怪獣がボクセル調となって登場する。

“ボクセル”とは要するに立体的なドット絵のこと。このビジュアルがとにかくかわいい。

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『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
東宝からSteamキーの提供を受けてプレイしています。
『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
我らが怪獣王ゴジラもデフォルメされた姿で登場。かわいい。

しかしそこはさすが東宝、愛らしい怪獣たちを愛でるだけでは終わらない。本格派ストラテジーの様相を呈しており、一定ターン以内に最善、最短の手数でステージをクリアーせねばならない。

そこには“詰将棋”のような緊迫感があり、さらに謎めいたストーリーやパズルを解いたときの独特の喜びが絶え間なく押し寄せてくる。

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ステージ総数は200を超えるが、1ステージごとのプレイ時間は短め。いくつものステージを連続で踏破していくのが気持ちいい。

本格的なストラテジーと特撮ファンにはたまらない要素を両方しっかり楽しめる本作。その魅力を、先行プレイ体験を通じてお伝えしていきたい。

怪獣がかわいいおもちゃに! ただし、気になる謎も……。

まずはゲーム概要から解説していこう。本作は1954年の生誕からまもなく70周年を迎える“ゴジラ”が主役のストラテジーゲームだ。

映画などでは敵や脅威として描かれるゴジラは、8×8の盤面上で動かすコマとして登場する。ゴジラの小さなおもちゃ、あるいはデフォルメフィギュアといったところか。

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主人公が怪獣たちをコマとして扱うボードゲームを遊んでいるという設定で進む。よく見ると盤面の周囲にはさまざまな小物が。

このボードゲームのなかでは、謎のキノコ型寄生怪獣“マッシュ”によって乗っ取られた建物や怪獣たちを撃破していく。活躍するのはゴジラをはじめとするさまざまな怪獣たち。ステージを進めるにつれ、マッシュの寄生から逃れた怪獣たちが新たな仲間として使用可能になっていく。

『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
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ボクセル調のグラフィックによって、映画でおなじみの怪獣たちは恐ろしさよりもかわいさが際立つ。だが、かわいいだけで終わらないあたりはさすがの東宝と言ったところ。主人公はボードゲームを遊んでいるだけのはずが、なにやら謎めいたストーリーが展開していくのだ。

このストーリー展開が、特撮映画好きの筆者にはかなり刺さった。ただの遊びだったはずが、不可解さがじわじわと現実に侵食してくるこの感覚。日常に潜む謎の現象や宇宙人といった非現実の脅威を描いた名作特撮番組『ウルトラQ』シリーズのようだ。

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ボードゲームを遊んでいるだけのはず。なのに、“家”という建物の周辺を怪獣のコマが歩くと、画面全体に謎の振動が。
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一部ステージでは“調査書”を入手でき、そこには気になる内容が記されている。マッシュはボードゲームのなかの架空の存在ではなかったのか。このボードゲームはいったい……?

巧妙に解き明かされていくストーリーが根っこにありつつも、本格的なストラテジーを解くために頭を使うのがとても気持ちいい。

ほとんどのステージは最短2~3ターンでクリアーでき、短時間でさくさく進めるのもポイントのひとつ。謎めいた物語を楽しみたいのに、バトルで足踏みしたらストレスになってしまう。1ステージごとのプレイ時間は想像以上に短かく、それが爽快感につながっている。

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1ステージのクリアーは早ければ5分もかからない。

全体的に高難度ではあるが、“Gチケット”を消費すると見られるヒントもあり、完全に詰まることはほとんどない。

とはいえ、Gチケットは各ステージを最短最善手でクリアーすると1枚もらえる限られたアイテムなので、ヒントに頼ってばかりではいられない緊張感も残っている。

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Gチケットでヒントを見ると、まず1ターン目の最善手そのものを再生して提示してくれる。2ターン目、3ターン目などそれ以降のヒントがほしい場合は、さらにチケットを消費する必要がある。

敵の攻撃も利用して盤面からマッシュを排除せよ

基本的なゲームシステムはターン制の戦略ストラテジー。こちらのターンと敵側のターンが交互に進んでいく。そのうえで、怪獣ごとのさまざまな能力を活用しないと最短クリアーはできないところがじつに奥深い。

まず基本能力として、ほとんどのユニットは攻撃と同時に相手をノックバックさせる(吹き飛ばす)能力を持っている。

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ゴジラが攻撃すると、正面の相手に2ダメージを与えて1マス吹き飛ばす。ほかの敵が向こうにいる状態で使うと……。
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敵同士が衝突。両方に追加の1ダメージを与えられる。

相手に攻撃でダメージは与えないが盤面端まで吹き飛ばせる“ラドン”や、一直線に突進して攻撃しつつ自分もダメージを受ける“アンギラス”など、怪獣ごとに攻撃方法や吹き飛ばし効果もさまざま。

これらの能力を活用して、敵をガスタンクにぶつけて大爆発を起こしたり、ほかの敵にぶつけて両方にダメージを与えたりと、1回の攻撃で最大の成果を得られる手を探していく。

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筆者のお気に入りはモスラ幼虫の攻撃。放物線状に糸の球を飛ばし、着弾した地点にいる敵に1ダメージを与えつつ、4方向の隣接マスに吹き飛ばしを発生させる。

敵は盤面上にある建物を攻撃しようとする。建物がダメージを負うと減点されるので、Gチケットがもらえる最善手を達成するには、基本的には建物にいっさいのダメージがない状態でクリアーしなくてはならない。

そこでまた役立つのが吹き飛ばし能力だ。敵の攻撃予告が出ると、そこから攻撃する方向は強制移動させても変わらない。吹き飛ばして位置をずらすことで、ほかの敵やマッシュに寄生された建物に対して攻撃させるのが非常に有効だ。

『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
ふつうの建物とは異なり、マッシュに寄生された建物はプレイヤー側の破壊目標だ。プレイヤー側の怪獣だけでは手数が足りないので、敵の攻撃を利用しよう。

また、マッシュに寄生された建物や一部の敵は、破壊することで特定の色の“Gパワー”というリソースを発生させる。このリソースを消費することで、盤面上にいるゴジラやほかの怪獣の隣りに新たな怪獣を召喚できる。

こうして召喚された怪獣はそのターンには移動ができず、出現したマスで攻撃を出さなくてはならない。新たな怪獣を目当ての場所に出すまでの布石を考えるのが、これまた奥深い。

『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
たとえば赤と緑のマッシュに寄生された建物を壊せば、赤と緑のGパワーを獲得できる。色つきの寄生された建物は優先して壊したい。
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怪獣ごとに召喚に必要なGパワーの色と数が決まっている。呼べる怪獣の種類はステージによって異なる。

中盤以降のステージでは味方の怪獣を攻撃して吹き飛ばすなどの奇策も必要になってくる。さらに、変わり種の能力を持つ怪獣もつぎつぎと登場。怪獣や敵のコマを吹き飛ばしつつも、ダメージを与えないどころか1ターン無敵状態にする“モスラ成虫”など、最初は使いどころに悩む怪獣も。

終盤に差し掛かっても、序盤や中盤とほぼ変わらないペースで新しい地形や敵、味方怪獣などが追加されていく。マンネリ化やパターン化がなく、つねに新鮮なプレイ感覚が味わえるのも本作の魅力だと感じた。

『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
ストラテジーゲームでは、ユニットの種類が出そろうと強いものばかりを愛用しがちになる。本作では新しいユニットやギミックがつねに供給されるので、一辺倒にはならない。
『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
各ステージで召喚できる怪獣が決まっているのも重要だ。この怪獣を呼べるということは……と、ステージのヒントにもなっている。

ゴジラファンならこだわりたい、さまざまな楽しみかた

つねに新鮮なストラテジーゲームを短時間のプレイで濃密に楽しめる本作。かなりの歯ごたえながら、ヒント機能のおかげでストラテジー初心者でもしっかり楽しめるので、「ゴジラファンだけど戦略ゲームは難しそう」と思っているプレイヤー層にもぜひ遊んでみてほしい。

とくにゴジラファン諸兄には、まさかこの怪獣が登場するとは! という驚きをぜひ味わってほしいところ。メカゴジラなどのおなじみの顔ぶれはもとより、近年の映画シリーズでは登場していない懐かしの怪獣も含め、15体以上の怪獣がファンたちとの再会を待っている。彼らの登場を彩る音楽もおなじみの曲ばかりで、間違いなくテンションが上がる。

『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
映画では『ゴジラ対ヘドラ』と『ゴジラ FINAL WARS』にしか登場していないヘドラが出てきたときには、思わず驚きの声が出た。あの特徴的なテーマソングを歌いたくなる。
『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
キングギドラは3本首ならではの広範囲攻撃が圧巻。さすがと言わざるをえない。
『ゴジラ ボクセルウォーズ』レビュー。見た目はキュート。中身は詰将棋のような本格シミュレーション。現実に非現実が迫る特撮的演出も光る怪作
ビオランテがゴジラと共闘するという、ある意味夢のようなシチュエーションも実現。倒されたときは「英理加…」とつぶやいて見送ろう。

こうした懐かしの怪獣たちとの再会も、ファンとしては十分なプレイモチベーションになるはず。そこからさらに踏み込んでチャレンジしてみてほしいのがエディットモードだ。このモードでは味方の怪獣や敵のコマ、各種建物などを自由に配置して、オリジナルのステージを制作できる。

山やビルを並べるのがまるで映画のジオラマを作っているかのようで、映画監督になったかのような気分を楽しんでもらえるかと思う。エディットを活用して映画のワンシーンを再現するなど、さらにこだわり抜いた楽しみかたも可能だ。